【ガス溶接とは?】原理や種類・手順を解説!メリット・デメリットは?

製造業

溶接作業とは

溶接とは、2つ以上の材料に熱と圧力とを加え、材料間に連続性があるように一体化させる接合技術です。

接合に至る材料の状態により、「融接」・「圧接」・「ろう接」の3つに分類されます。

 

融接:加熱により材料を液相状態にして接合

圧接:固相状態のまま材料に圧力をかけ接合

ろう接:固相状態の材料を液相状態の溶加材で接合

 

この記事では代表的な溶接技術である「融接」のうち、熱源としてガスの炎を利用する「ガス溶接」の原理や特徴、メリット・デメリットを紹介します。

 

ガス溶接とは

ガス溶接とは材料を液相状態になるまで高温にする、融接に分類される溶接技術です。熱源としてガスの炎を用い、材料に直接当て高温状態にします。

 

ガス溶接の原理と特徴について紹介します。

 

ガス溶接の原理

ガス溶接の熱源は、アセチレン・水素・プロパン・ブタンなどの可燃性ガスと、支燃性ガスの酸素との混合ガスが、燃焼することで発生する炎です。

支燃性とは燃焼を助ける性質のこと。酸素ガス量を調整し、トーチ火口に形成される白色火炎(白心)の大きさを最適化、炎が炭化炎になるのを防ぎます。

可燃性ガスとして一般的に用いられるのはアセチレンです。アセチレンー酸素混合ガスの燃焼温度は、他のガスよりも高い約3,200℃になります。

この炎=熱源を溶接したい材料の接合部に当て、材料同士が液相になるまで溶融させた後、冷却固化で結合させるのが、ガス溶接の原理です。

 

ガス溶接の特徴

ガス溶接は材料を溶融するための熱源の作り方と与え方により特徴づけられます

  • 熱源原料として、可燃性と支燃性のガスを混合し用いている
  • 混合ガスを燃焼させ、できた炎から熱を与える

 

このガス燃焼による熱源が、溶接作業および仕上がりに与える特徴は次の通りです。

  • ガス量の調整により、加熱量の制御ができる

 →高温で割れやすい・融点が低い・薄い、材料の溶接が可能

 →溶接欠陥を少なくした溶接が可能

  • アーク溶接など他の溶接と比較し溶接温度が低い

 →火花が散りにくく、接合部位を確認しながら溶接できる

 

 ガス溶接の手順

ガス溶接は、アセチレンガスなどの可燃性ガスと、支燃性ガスである酸素を使用するため、取り扱いや手順を誤ると火傷や怪我につながる可能性があります。

 

作業する前に、取り扱いや作業手順を十分に理解することは必須事項です。

ガス溶接の手順について紹介します。

 

ガス溶接装置の準備

ガス溶接装置は次の手順で準備します。

 

①作業前点検を実施後、ガスボンベを準備(必ず縦に設置)

②圧力調整器・ガスホース・溶接トーチに異常なきことを確認する

③ガスボンベとガスホースを接続する

④溶接トーチの全バルブ閉を確認後ガスホースを接続する

⑤酸素ボンベの栓を開け圧力調整器で残ガス残量を確認する

⑥酸素ボンベのガス圧調整バルブを回し所定の圧力まで昇圧する

⑦酸素ガス経路に漏れがないことを確認する

⑧燃料ボンベの栓を開け圧力調整器で残ガス残量を確認する

⑨燃料ボンベのガス圧調整バルブを回し所定の圧力まで昇圧する

⑩燃料ガス経路に漏れがないことを確認する

⑪溶接トーチのバルブをわずかに開きガスの噴出を確認する

 

ガス溶接作業の準備

ガス溶接作業の準備は、次の通り実施します。

 

①エプロン・手袋・帽子・遮光メガネなどの保護具を装着する

②溶接トーチの燃料ガスバルブをわずかに開く

③専用ライターでトーチ火口先端に点火する

④溶接トーチの酸素ガスバルブを開き白心の大きさを調整する

⑤試し加熱で材料に適した火炎に調整する

 

ガス溶接作業

ガス溶接作業は、つぎの手順で行います。

 

①溶接する材料をセットする

②接合部に火炎を当て溶融させた後に固定する

③冷却させ接合状態を確認する

 

消火

消火の手順、特にガスを止める順番を間違えると、逆火などにより爆発事故につながる恐れがあり大変危険です。

必ず次の手順で消火作業を実行します。

 

①最初に、溶接トーチの酸素ガスバルブを閉める

②次に、溶接トーチの燃料ガスバルブを閉める(火が消える)

③燃料ボンベの栓を締める

④酸素ボンベの栓を締める

⑤燃料ボンベのガス圧調整バルブを反時計方向に回し緩める

⑥酸素ボンベのガス圧調整バルブを反時計方向に回し緩める

⑦溶接トーチの燃料ガス・酸素ガスバルブを緩め経路内のガスを抜く

⑧燃料・酸素ボンベの圧力計がゼロになっているのを確認する

⑨ガスホースを溶接トーチ・ガスボンベから外す

 

ガス溶接のメリットとデメリット

ガス溶接のメリットとデメリットを正しく知れば、溶接する材料の物性や形状、求められる溶接部の品質、などを考慮して適切な溶接手段を選択できます。

熱を与える手段と溶接設備からなる、ガス溶接のメリットとデメリットを紹介します。

 

ガス溶接のメリット

ガス溶接のメリットは、熱源材料としてガスを使うこと、そのため熱量を制御しやすいこと、などが要因になっています。

 

溶接不良などの失敗を防ぎやすい

ガス溶接の温度は約3,200℃であり、同じく融接させて接合するアーク溶接の温度約5,000〜20,000℃と比較しかなり低いです。

低い溶接温度は、火花の少ない溶接を実現します。作業者は視界をさえぎられることなく、溶接状態を確認しながらの作業が可能です。

溶接トーチから出る炎の大きさ、材料と炎との距離、炎を材料に当てている時間など品質状態を確認し調整しながら溶接作業することが可能になります。

そのため、溶接不良などの失敗を未然に防ぐことができ、安定した品質で溶接できるのがガス溶接のメリットです。

 

薄板の溶接と相性がよい

ガス溶接は、与える熱量が他の溶接と比較して小さく、炎が熱源のため材料に与える熱量を制御しやすい特徴があります。

薄板の場合、少ない熱量でも高温になりやすく、局所的に高温になるとストレスにより割れが発生するなど品質に影響が出る場合があり注意が必要です。

ガス溶接であれば、燃料ガスの供給量で炎の大きさを変えたり、作業者が材料の様子を見て炎と材料の距離を変えたりして熱の影響を調整できます。

 

そのため、ガス溶接は熱による影響を受けやすい薄板の溶接と相性がよいと言えます。

電気を使わずに溶接ができる

ガス溶接に必要な設備は、ガスボンベ・圧力調整器・ガスホース・溶接トーチです。設備を稼働させるのに電気を使用しないシンプルな構成です。

そのため、電気配線のない現場・電源を引っ張れない現場・アースを取れない現場、などでも溶接作業ができるメリットがあります。

電気を使わないため、大電流を扱う溶接機で起こりうる感電事故の心配がないのもガス溶接のメリットです。

 

ガス溶接のデメリット

ガス溶接のデメリットは、他の溶接方法と比較し与える熱量が小さいこと、炎で熱を与えるため加熱範囲を絞りにくいこと、などが要因になっています。

 

厚板の溶接には効率が悪い

ガス溶接は、最も高温になるアセチレンガスを燃料とした場合でも、与えられる熱量が小さく、熱容量が大きい厚板を溶融するまでに時間を要します。

このため、一箇所の溶接にかかる時間が長く効率が悪くなり、生産性を要求される現場には不向きです。

また、溶接時間が長いことは、周辺部の温度上昇につながります。不必要な加温は材料劣化による強度低下などを引き起こす可能性があり注意が必要です。

厚板の溶接手段にガス溶接を選択した際は、作業効率と溶接周辺部の品質に十分配慮する必要があります。

 

可燃性ガスとアセチレンガスの扱いが難しい

ガス溶接の燃料ガスとして最も一般的なのが、可燃性のアセチレンガスです。可燃性とは空気中や酸素中で燃えることを意味しています。

アセチレンガスは可燃性ガスの中で最も高温で燃焼するため、溶接でのメリットがある一方、空気中や酸素中での濃度が高いと爆発に至るため危険です。

作業場の換気を良くする、作業前にガス漏れがないか確認する、近くに火気がないことを確認する、などを徹底する必要があります。

作業効率がアーク溶接より悪い

融接接合として、ガス溶接と比較されるのはアーク溶接です。

ガス溶接の熱源温度は、燃料ガスにアセチレンガスを用いた場合でも約3,000℃〜、アーク溶接の約5,000℃〜と比較しかなり低くなります。そのため、ガス溶接は材料の溶融までにかかる時間がアーク溶接より長くなり、作業効率が落ち生産性が悪いです。

とは言え、ガス溶接には火花が発生しにくいため溶接状態を確認しながら作業できるメリットがあります。

溶接する材料の特性を十分に理解し、適切な溶接方法を選ぶことが重要です。

 

まとめ

溶接では、それぞれの手法の原理を理解し、接合部に求められる品質や外観を実現できる接合方法を適切に選択することが重要です。

本記事で紹介したガス溶接は、熱源としてガス燃焼の炎を使うことがメリットになりデメリットにもなっています。

また、可燃性ガスの使用により危険をともなうため、正しい作業手順を理解して遵守すること、作業の都度ごとに確認することが大切です。

ぜひ本記事を含め定期的なチェックをおすすめします。