【アーク溶接とは?】原理・種類を分かりやすく解説します!

製造業

アーク溶接とは

アーク溶接とは、気体の放電現象であるアーク放電を熱源に用いた接合技術です。

電極の近傍のみを短時間で5,000℃以上の高温にでき、作業効率が良いため、自動車や建築など生産性を求められる現場で幅広く利用されています。

 

アーク放電は条件により20,000℃近くまで母材を昇温でき、あらゆる金属を溶融・接合させることが可能です。

一方、熱が強すぎるため、薄板など熱容量が小さい母材に用いる際には注意が必要となります。

 

アーク溶接の原理

引用元:Mitsuri

 

アーク溶接の原理は次の通りです。

  • ①空間的に離れた電極と母材との間に電圧をかける
  • ②電圧上昇により電極−母材間の絶縁が破壊されがアークが発生する
  • ③母材に電流が流れるとともに温度上昇し溶融する

 

一般的には母材を電源のプラス側、電極をマイナス側へ接続します。(正極性)

母材の溶け込みを浅くしたい場合は、母材をマイナス側へと逆接続します。(逆極性)

 

電極周辺に流すシールドガスの役割は、母材から空気を遮断し反応を抑制することです。

溶融した金属は高温のため反応性が高く、空気と反応すると溶接品質が低下するため注意が必要です。

 

溶加材は母材が溶融してできる溶融池の品質確保や、母材間の空隙を埋めるために用います。求められる品質やコストにより適切な材料の選択が必要です。

 

ガス溶接との違い

アーク溶接と比較される溶接方法にガス溶接があります。アーク溶接との違いは、熱源にガスを燃焼させた炎を用いることです。

ガス溶接の熱源である炎は、一般的に可燃性のアセチレンガスと支燃性の酸素ガスとを混合し燃焼させてつくります。

ガス燃焼による炎は、温度が約3,000℃、アーク放電による約5,000〜20,000℃より低く、加熱範囲を絞りにくいのが特徴です。

ガス溶接は火花が飛び散りにくいため、接合点を観察しながら作業できる一方、母材が溶融するまでには時間がかかります。

ガス溶接については、こちらの記事でも解説していますので、興味がある方はご一読ください。

アーク溶接は資格が必要?

アーク溶接の作業に際し、必要な資格はありません。ただし、作業を安全に行うため「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を受講する必要があります。

 

「アーク溶接等の業務に係る特別教育」(21時間/3日間)の内容は次の通りです。

 

科目

学習時間

学科

アーク溶接等に関する知識

1時間

アーク溶接装置に関する基礎知識

3時間

アーク溶接等の作業方法に関する基礎知識

6時間

法令

関係法令

1時間

実技

アーク溶接装置の取り扱い及びアーク溶接等の作業の方法

10時間

 

修了試験はなく、講習を受講することで、アーク溶接の作業に従事できます。

 

## アーク溶接の種類

アーク溶接は、アーク放電を起こす電極自体が溶融するケースが有り、電極消耗の違いにより、消耗電極式と非消耗電極式に分けられます。

 

さらに、消耗電極式には、電極の種類、電極への被覆剤(フラックス)の有無・シールドガスの種類により区分される、7種類の方式があります。

 

また、非消耗電極式は2種類あり、電極に耐高温材料を用いる方式と、イオン化したガスをアーク導電体に用いる方式です。

 

消耗電極式と非消耗電極式の違い

 

消耗電極式と非消耗電極式の違いは、溶接により電極が溶け出し無くなっていくか、電極が溶け出さないかの違いです。

 

消耗電極式では、電極自体が溶接部に溶け込んで母材を接合します。非消耗式では、電極は溶融せず溶加剤を溶かし込み接合します。

 

消耗式(溶極式)

消耗式には、電極、シールドガス、被覆材の供給方法により次の方式があります。

 

電極の違い:スタッド溶接

被覆剤供給方法の違い:被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、セルフシールドアーク溶接

シールドガスの違い:マグ溶接、ミグ溶接、炭酸ガスアーク溶接

 

それぞれ詳細に紹介します。

 

スタッド溶接

スタッド溶接は、電極としてスタッド(ボルトやナット)を用いるアーク溶接です。

 

溶接ガンにスタッドを取り付け、母材に押し当てた後に引き上げアークを発生、スタッドが溶融してできた溶融池に圧入し母材と接合します。

 

メリット

・作業者のスキルに依存せず、安定した品質で溶接が可能。

・短時間で溶接でき溶接周辺部の温度上昇を抑えるため、母材へのダメージが少ない。

 

デメリット

・電極自体を溶接するため、溶接箇所の品質を明確に検査する方法がない。

 

被覆アーク溶接

被覆アーク溶接は、電極として被覆剤(フラックス)に覆われた溶接棒を用いる溶接です。

 

被覆剤が溶けて発生するガスやスラグが母材表面をシールドし、反応性の高い溶融池に不純物が溶け込むことを防ぎます。

 

安価な設備で室内外を問わず手作業で手軽に溶接できるため、昔から活用されており、手溶接とも呼ばれています。

 

メリット

・被覆材が溶けて発生するガスやスラグが母材表面をシールドするため、風など周辺環境の影響を受けにくい。

・設備が安価なため、室内外で手軽に溶接できる。

・手作業のため、素材や形状によらず溶接が可能である。

 

デメリット

・溶接棒の交換やスラグを除去する必要があり、作業効率が低い。

・作業者の技量差により、溶接の品質が異なってしまう。

・溶接ヒューム(溶けた金属が蒸気になった後、冷えて微粒子になったもの)が発生しやすい。

 

マグ溶接

マグ溶接は、シールドガスとしてMAG(Metal Active Gas:不活性ガスと炭酸ガスの混合ガス)を用いるアーク溶接です。

 

炭酸ガスの分解による酸素が溶融池と反応し酸化物を作り出し、陰極点が増えることでアークがより安定化します。

 

また、炭酸ガス分解時の熱損失により、アークが強制的に冷やされ(熱的ピンチ効果)、収縮して狭くなることで、より深い溶け込みを実現します。

 

電極にはコイル状のワイヤを使用し、溶接による消耗に従い自動的にトーチ先端部まで供給するため、連続した溶接が可能です。

 

メリット

・ミグ溶接と比較し、深い溶け込みを実現できる。

・炭酸ガスアーク溶接と比較し、スパッタの発生を抑制できる。

 

デメリット

・表面に酸化被膜があるアルミやチタンなどでは、陰極点が増えすぎ反応が激しくなり品質が安定しない。

 

ミグ溶接

ミグ溶接は、シールドガスとして(Metal Inert Gas:アルゴンやヘリウムなどの不活性ガス)を用いるアーク溶接です。

 

マグ溶接との違いは、シールドガス中の炭酸ガスの有無のみ、電極はマグ溶接と同様にコイル状のワイヤを用います。

 

不活性ガスのみでは分解による熱損失が少ないため、熱的ピンチ効果が起きにくく、アークが広がりやすい傾向があります。

 

メリット

・アルミやチタンなど非鉄金属でも反応が激しくならないため、安定して溶接できる。

・アークが広がり分散するため、仕上がりが美しい。

 

デメリット

・アークが広がるため、接合面の溶け込みが浅くなりやすく接合不良につながる。

・不活性ガスが高価なためコストがかかる。

 

炭酸ガスアーク溶接

炭酸ガスアーク溶接は、シールドガスとして炭酸ガスを用いるアーク溶接です。シールドガスを炭酸ガスのみにしたマグ溶接とも言えます。

 

炭酸ガスの分解による熱損失がマグ溶接より多くなるため、熱的ピンチ効果がより大きくなり、アークが集中し反応が激しくなるのが特徴です。

 

メリット

・炭酸ガスが安価であるため、コストメリットがある。

・短時間で溶融できるため、作業効率が良い。

 

デメリット

・スパッタ(金属微粒子)が発生しやすいため、接合面の外観品質が低下する。

・一酸化炭素が発生するため、換気には十分注意する必要がある。

 

サブマージアーク溶接

サブマージアーク溶接は、予め溶接部に散布された粒状フラックス中に電極ワイヤーを送り、アークを発生させるアーク溶接です。

 

被覆アーク溶接で用いる溶接棒の心線と被覆剤を分離して個別に供給する方法が、サブマージアーク溶接になります。

 

溶接棒を交換する必要がなく、連続溶接が可能になるのが特徴です。

 

メリット

・太径ワイヤーを用いると、高電流による深い溶け込みの溶接が可能である。

・アークはフラックス中で発生するため、遮光が不要である。

・スパッタや溶接ヒュームがほとんど発生しない。

・シールドガスを用いないため、風の影響をほとんど受けない。

・作業者による技量差の影響を受けにくく、安定した品質の確保が可能である。

 

デメリット

・フラックス散布のため、溶接姿勢が下向きと横向きに限定される。

・アークが見えないため、溶接不良が発生した時、目視で解明することが難しい。

・溶接面の形状が直線かそれに近い形状に限られ、短い溶接長には不向きである。

・フラックスの回収とスラグの剥離が必要となる。

 

セルフシールドアーク溶接

セルフシールドアーク溶接は、シールドガスを用いないアーク溶接です。被覆剤が塗布された電極ワイヤーを用い、半自動溶接が可能です。

 

被覆アーク溶接と同じ原理で、母材表面をシールドし、反応性の高い溶融池に不純物が溶け込むことを防ぎます。

 

メリット

・シールドガスを用いず、風の影響を受けないため、屋外での溶接に適している。

・被覆アーク溶接より溶着速度が早いため、作業効率が良い。

 

デメリット

・他の溶接方法と比較し、スパッタやヒュームの発生量が多い。

・専用ワイヤーが高額なため、コストがかかる。

 

非消耗式(非溶極式)

非消耗式には、電極材料とアーク導電体に特徴がある2つの方式があります。

 

電極材料に耐高熱材料を使用:ティグ溶接

アーク導電体にイオン化したガスを使用:プラズマアーク溶接

 

それぞれ詳細に紹介します。

 

ティグ溶接

ティグ溶接(Tungsten Inert Gas)は、電極にタングステンを用い、シールドガスに不活性ガスを用いたアーク溶接です。

 

融点が高く消耗しにくいタングステンを電極にすることで、電極の供給なしに連続で溶接できます。

 

メリット

・精密な溶接ができ薄板や複雑な形状にも適用可能である。

・溶接面の仕上がりが美しい。

・あらゆる種類の溶接に使用できる。

 

デメリット

・溶融速度が遅く、作業効率が悪い。

・不活性ガスが高価であり、コストがかかる。

・仕上がりの品質に作業者の技量差がでやすい。

 

プラズマアーク溶接

プラズマアーク溶接は、ディグ溶接と同様にタングステン電極を用い、不活性ガスをイオン化したプラズマガスをアーク伝導体とするアーク溶接です。

 

ティグ溶接と比較し、より幅の狭いアークを発生させることが可能になります。

 

メリット

・狭いアークで熱集中性が高いため、ビード幅が狭く歪みの少ない溶接が可能になる。

・スパッタが発生せず、アークの指向性が高いため、仕上がりが美しい。

・電極の消耗が少ないため、長時間の連続溶接が可能である。

 

デメリット

・溶接トーチの操作が難しい。

・装置の価格が高く、ガスの使用量が多いなどランニングコストがかかる。

 

まとめ

アーク溶接は、電極消耗の有無や、反応性の高い溶融池をシールドする手段、さらにはアークの密度により多くの方法があります。

 

溶接したい材料の特性や溶接部に求められる仕上がり品質、溶接作業する場所が屋内か屋外かもチェックし、適した溶接方法を選択することが大切です。

 

また、アークを熱源とするとガスの炎を熱源とした時と比較し、溶融部はかなり高温になります。

 

初めて溶接作業する前には、特別教育を忘れずに受講し、正しい知識と技能を習得することが必要です。